育休後に復帰してしばらくすると、「この働き方で本当に続けられるのかな」と胸の奥がざわつく瞬間があります。
制度上は時短勤務や両立支援の仕組みが整っていても、現場では“想定外の負担”が積み重なり、気持ちがすり減っていくこともあります。
私自身は異動願いを出した経験はありませんが、同僚のママたちのリアルな声を聞くほどに、社内でできる調整の重要性を強く感じてきました。「転職した方が早いのでは?」と考える前に、まずは社内で解ける結び目がないかを見直してみる価値は大きいと思います。
今回は、管理職ママと一般職ママ、それぞれの立場でどんな悩みを抱えているのかを整理しながら、上司への相談、異動や部署変更という選択肢、そしてそれでも難しいときの次の一歩までを掘り下げていきます。
育休後に働きにくさを感じたら|社内調整という選択肢もある
復帰直後は、家庭側のスケジュールも職場のペースも不安定で、予定通りに進まないことが重なります。
そんなとき、「この会社で続けるのは難しい」と早々に転職を思い浮かべる人もいますが、その前に社内でできる調整を試してみる価値があります。
たとえば、業務量や担当範囲の見直し。定例会議の時間を前倒ししたり、在宅勤務の比率を一時的に増やしたりするだけでも、日常のストレスはずいぶん変わります。
私の職場でも、上司に家庭の事情を丁寧に伝えたことで業務の分担を少し調整してもらい、無理なく続けられるようになったママがいました。
彼女は「人に甘えている気がして最初は言い出しづらかったけど、思い切って伝えてみたら“それは早く言ってくれれば良かったのに”と笑われた」と話してくれました。紙の制度には載っていないけれど、現場で融通できることは意外と多いもの。
まずは一歩、社内で動かせる部分を探ってみることがキャリア調整の第一歩になります。
育休後の管理職ママが抱えるジレンマ
大手企業では、管理職は同じ部署に2〜3年とどまるのが通例という話をよく耳にします。
責任の大きさや組織の安定性を考えれば納得のいくルールですが、現実には「どうしても耐えられない」と感じることもあります。
そういう場合でも、人事や上司に相談する道は閉ざされているわけではありません。
ただし、ここに「1年で異動希望を出したら逃げに見えないか」という劣等感が強く絡みます。
管理職であるがゆえに「自分で状況を改善すべきだ」「部下に示しがつかない」と自分を追い詰めてしまうのです。
さらに、もし転職に踏み切れば役職が下がるリスクが高く、築いてきた評価や報酬を手放すことへの不安も大きいです。
私が聞いたある管理職ママの言葉が印象に残っています。
「異動願いは最後の手段。正直“逃げた”と思われないか後ろめたさがある。とは言っても“いざとなれば相談できる”という救いの気持ちもある。その狭間で揺れ動く。」
逃げ道が全くないと思うと人は息苦しくなりますが、「相談という手段がある」と知っているだけで、前を向いて働き続ける力になるのです。
管理職ママにとって異動や部署変更は簡単な選択ではありません。
しかし、それは「弱さ」ではなく「働き続けるための現実的な選択肢」。
この視点を持てるだけでも、自分を責めすぎずにすむのではないでしょうか。
育休後の一般職ママが直面する葛藤
一方で、一般職のママたちの悩みはまた違う角度にあります。
多くの声として聞くのは「子なし時代の自分の働き方」と「今の現実」とのギャップです。
独身の頃や子どもがいない頃は、遅くまで残業してでも成果を出そうと頑張れた。
ところが育児が始まると、保育園のお迎えや子どもの発熱で予定が狂い、思うように働けなくなる。
かつての自分と比べて「こんなはずじゃなかった」と落ち込んでしまうのです。
その結果、「この会社に残っていて良いのだろうか」と迷いが生まれます。
管理職を目指していないためキャリアの階段が見えにくく、「それなら職場ごと変えてしまった方がいいのでは」と考えやすいのも一般職ならではです。
とはいえ、大手企業ならではの待遇や人間関係、これまで積み上げた経験を手放す勇気もなかなか持てません。
特に最近は、20代後半で結婚し、30代に入ってから出産する人も増えており、安定と挑戦の間で揺れ動く姿はとてもリアルです。
あるママは「忙しすぎて限界を感じ、異動希望を出した。部署が変われるなら変わりたいと思っている」と話していました。けれど同時に、「この会社にいる限り、どの部署も結局は忙しいのでは」とも感じているそうです。異動は必ずしも環境を一変させる魔法ではありませんが、それでも“このままでは続けられない”と感じたときに選べる現実的な手段の一つ。大切なのは、異動を前向きに捉え、自分と家庭に合う働き方を模索し続ける姿勢なのだと思います。
育休後の上司相談|伝え方と注意点
社内での調整を進めるうえで欠かせないのが「上司への相談」です。
ですが、ただ「大変です」「無理です」と言うだけでは、相手もどうサポートして良いかわかりません。
大切なのは「前向きな意図」と「具体的な解決案」をセットで伝えることです。
例えば、
このように「現状→課題→改善案」という流れで話すと、相手も理解しやすく、一緒に解決策を探す姿勢が伝わります。
逆に避けたいのは、いきなり「異動させてください」と結論だけを伝えること。
関係が硬直してしまい、本来なら取れたはずの改善策が見えなくなります。
小さな改善でも積み重なれば効果は大きいです。
最初から完璧を目指さず、まずは一つ改善する。そして次にもう一つ。
段階的に職場環境を整えていくことが、両立期の現実には合っているのだと思います。
育休後、それでも解決できないときは?次の一歩の考え方
もちろん、社内での調整だけでは解決できないこともあります。
組織の文化や体制の制約、自分では動かしようのない業務の性質。
そうした壁にぶつかったときに初めて、「社内に残る」か「職場を変える」かをフラットに考えれば良いのです。
転職は特別な決断ではなく、異動や部署変更と同じく「自分と家族を守るための手段」として捉えられます。
管理職であれば、役職や報酬の変化も含めて総合的に判断する必要がありますし、一般職であれば、勤務時間や在宅制度、チーム文化など生活を左右する要素を優先度順に整理することが大切です。
ポイントは「何を手放し、何を得たいのか」を明確にすること。
手放すものへの不安は自然な感情ですが、得たいものがはっきりすると迷いは静まります。
最終的に選ぶのは社内の道か社外の道か。いずれにしても、自分が納得して選べたかどうかが、その後の毎日の充実度を左右します。
育休後ママのキャリア調整まとめ
管理職ママも一般職ママも、立場は違っても「このままで良いのだろうか」という葛藤は共通しています。
異動願いや上司への相談は、逃げではなく「働き続けるための工夫」です。
まずは社内で動かせるところから整えてみること。
それでも難しければ、転職という次の一歩を考えるのも自然な流れです。
大切なのは「自分と家族にとって何を優先するか」を忘れずに、納得できる選択をすること。
選択肢があると知るだけで、人は少し強くなれます。
焦らず、でも確実に。自分らしいキャリアの形を守っていきましょう。